本記事で解決すること
仕組みとかメリットとかデメリットとかざっくりと知りたいなあ
最後には最先端システムの5G通信やWi-Fi6での実用例も紹介しますので、
最後までお楽しみください!
MIMOとは
そもそもMIMOとは何でしょうか?
MIMOとは、Multiple-Input and Multiple-Outputの略で「多入力、多出力」という意味になります。
簡単にいうと、アンテナをたくさんつけることで、より多くのデータをやり取りできるようにするというものです。
IoTなどを始めとしたテクノロジーの進化によって、データ通信の需要が高まっていることを受けて、MIMOアンテナは注目を集めるようになりました。
1つの基地局が複数のアンテナを持つことで、大容量・多接続な通信を実現。
MIMOアンテナの仕組み
では、MIMOアンテナはどのようにして動作するのでしょうか?
どのようにしてMIMOが多入力・多出力の通信を可能にするのか以下の3つの切り口から解説していきます。
- マルチパス(空間分割多重)
- データの復調
マルチパス|空間分割多重

「マルチパス」という現象をご存知ですか?
マルチパスとは、通信の際に障害物などの影響で電波が複数の経路から届く現象をいいます。
上の図1に簡単な概念をまとめました。
電波の性質の1つに「反射」というものがあります。
障害物などがある際に、反射して経路を変える現象です。
光の反射をイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。
この反射によって、電波は障害物によって様々な経路を通って受信されます。
これがマルチパスという現象です。
このように、電波が反射の性質を持つことで障害物があったとしても通信を行うことができるのですが、
連続的にデータを送る際には、マルチパスで遅れてきた電波と後からくる電波が重なってしまい通信のエラーを起こしてしまうという問題がありました。
このマルチパスによる問題を積極的に活用しようする技術がMIMOです。
複数のアンテナを搭載することで、通信速度を高めるだけでなくマルチパスでさえ積極的に活用することができるようになりました。
そのため、従来問題とされていたマルチパスを多重化技術の1つと捉えて、「空間分割多重」と呼んだりもするようになりました。
データの復調

では、このような複数のアンテナで送られた電波をどのようにして識別するのでしょうか?
答えはデータの復調です。
復調とは受信した電波からデータを取り出すことをいいます。
(一方で、電波にデータを乗せることを変調といいます。)
では、MIMOでの復調はどのようにして行われるのでしょうか?
今回は初心者にもわかるようにざっくりと解説してきます。
上の図2をご覧ください。MIMOでの復調の仕組みを図解しました。
図中のTは送信データ、Hが伝達関数、Rが受信データです。
伝達関数は送受信の関係を関係を表すものです。行列で表されます。
図2の式に示した通りで、伝達関数がわかることで送信データを予想することができます。
では、この伝達関数はどのようにして求めるのでしょうか?
結論から言うと、あらかじめ決まっているデータを送信部から受信部に送ることでその伝達関数を特定することができます。
このようにして伝達関数を特定してから、通信を行うこと受信したデータから送信されたデータを紐解くことができます。
復調の原理はざっくりとこんな感じです。
その他にも通信中に生じる雑音などによって通信に誤差が生じるなどの考慮することはたくさんありますが、今回紹介した知識があれば基本的に十分です。
このようにして、複数のアンテナでマルチパスを利用した通信を行うことができます。
復調の過程で、複数の送信データを処理。
SU-MIMO,MU-MIMOの違い
MIMOには大きく分けて以下の2種類あります。
- SU-MIMO (Single User-MIMO)
- MU-MIMO (Multiple User-MIMO)
MIMOの性質を理解する上で、この2つの違いを抑えておくことは非常に重要です。
SU-MIMOとは、Single User MIMOの略で、同時に接続できる端末数が1つしかないMIMOを意味し、
MU-MIMOはMultiple User MIMOの略で、同時に複数の端末を接続できるMIMOは意味します。
この2つを深堀りしていくと長くなってしまうので、別の記事を設けました。
図解を含めて初心者にもわかりやすく解説したので、MIMOについての理解を深めたい方は以下のリンクからご覧ください。
MU-MIMO:同時に複数のデバイスを接続
MIMOアンテナのメリット
では、MIMOについての理解が深まってきたところで、MIMOアンテナのメリットを紹介していきます。
今回は以下のポイントに焦点を当てて解説していきます。
- 大容量・高速通信
- 同時多接続
- ビームフォーミング
大容量・高速通信
メリットの1つ目は、「大容量・高速通信」です。
MIMO通信では1度の通信に使う電波の数が増えるので通信速度はその分高まるからです。
例えば送受信で2つのアンテナを使用したとしましょう。
使用する電波が2つになるということは一度に送ることができるデータの量は単純計算で2倍になります。
このように、一度に送ることができるデータ量が増えるということは通信速度が高まるということにつながります。
つまり、MIMOを活用することで従来の1つのアンテナと比較してより高速で大容量な通信を行うことができると言えます。
したがって、MIMOのメリットの一つとして「大容量・高速通信」が挙げられます。
同時多接続
次に紹介するメリットは「同時多接続」です。
MU-MIMOを利用することで、同時に複数のデバイスを接続することができるようになるからです。
IoTの普及につれて、同時に接続可能なデバイス数の向上が求められるようになりました。
この「同時多接続」は以前に紹介した5G通信の3つのコンセプトにも含まれています。
通信速度の向上は目に見えてわかるのでそればかりに注目してしまいますが、「同時多接続」も今後の通信を支える重要な要因です。
ということで、MIMOの2つ目のメリットは「同時多接続」でした。
ビームフォーミング

最後に紹介するメリットはビームフォーミングです。
ビームフォーミングとは、ビームのように直進性の高い電波を利用して行う通信です。
従来の通信では、上の図のようにアンテナから全体的に電波を周囲に飛ばすことで通信を行っていました。
しかし、ビームフォーミングでは異なります。
通信したい特定の機器に対して狙いを定めてビームのように電波を送信します。
このようにすることで効率よく多くのデバイスとの通信をすることができるようになります。
それだけでなく、ビームフォーミングを利用することで減衰しやすい高い周波数の電波を効果的に活用することができるようになるというメリットもあります。
しかし、どうしてMIMOのメリットとしてビームフォーミングが挙がるのでしょうか?
なぜなら、ビームフォーミングを実現するには複数のアンテナを利用して制御する必要があるからです。
複数のアンテナからの電波を干渉させながらビームを制御するので、MIMOアンテナのような複数の素子を持つアンテナでなくてはいけません。
従来では1つのアンテナしか搭載されてなかったので、ビームフォーミングを利用することができませんでした。
しかし、MIMOの普及、アンテナ数の増加を受けてビームフォーミングの活用は近年どんどん進んでいます。
今後もMIMOの素子数が増えていくことが予想されているので、このビームフォーミングはより精度が高くなり、利用も増えていくと考えられます。
① 大容量・高速通信
② 同時多接続
③ ビームフォーミング
MIMOアンテナのデメリット
MIMOアンテナは非常に優れた技術ですが、良い面ばかりではありません。
本記事では、他のメディアではあまり取り上げられていないデメリットについても解説していきます。
以下の2つです。
- 消費電力が高い
- 製造コストが高い
消費電力が高い
MIMOアンテナのデメリットの1つ目は「消費電力が高い」ことです。
同時に動作するアンテナが増えるため、消費電力が高まるからです。
MIMOアンテナにおいて、素子数が増えれば増えるほど電波を多く飛ばすので当然消費電力は高まります。
また、それだけではなく復調の際に必要な電力も高まります。
先ほども紹介しましたが、MIMOでの通信を行う際には通常のアンテナ以上に複雑な復調をすることが求められます。
この複雑な計算を処理することになるので、当然消費電力も高くなります。
したがって、アンテナから電波を飛ばす量が増え、計算も複雑になるので、MIMOアンテナの消費電力が大きくなってしまいます。
そのため、「高い消費電力」はMIMOアンテナのデメリットの1つと言えます。
製造コストが高い
MIMOアンテナのデメリット2つ目は、「製造コストが高い」ことです。
アンテナを製造をする際により高度な技術が求められるからです。
MIMOアンテナを製造する際には、複数の素子を搭載されるのでより複雑な構造になります。
また、ビームフォーミングの技術を搭載したり、同時に多数の信号を処理する技術を取り入れる必要があるのでより複雑なものになります。
そのため、MIMOアンテナを製造する際には、従来のアンテナと比べて製造に手間がかかるので、その分コストが高くなってしまいます。
これがMIMOアンテナのデメリット2つ目として「高い製造コスト」が挙げれる理由です。
① 消費電力
② 製造コスト
MIMOアンテナの活用状況
MIMOアンテナは私たちの日常ではどのようにして活用されているのでしょうか?
今回はモバイル通信(5G通信)とWi-Fi(Wi-Fi6)の2つの観点から解説していきます。
モバイル通信|5G通信
モバイル通信でのMIMOアンテナ活用はかなり注目を集めています。
今回は現在普及が進んでいる5G通信を例に紹介します。
5G通信では、Massive-MIMOと呼ばれる大規模なMIMOアンテナが導入されます。
(Massive:「大規模」「大きい」などの意味を持つ英語)
急増する通信データ量へのニーズに答える必要があるからです。
MIMOアンテナの活用は以前からされていました。
しかし、通信へのニーズが高まるにつれて、MIMOアンテナの素子数が増加していきました。
そうして、現在ではMassive-MIMOと呼ばれる素子数が非常に多いアンテナへと進化していきました。
なんと、128本のアンテナが1つの基地局に搭載されています。
多量の素子数を持つMassive-MIMOによってビームフォーミング、空間多重を高精度で実現できるようになります。
その結果、超高速で同時多接続が可能な5G通信を実現することができるのです。
通信と聞くと使用する周波数に目が行きがちですが、Massive-MIMOといった様々な技術に支えられて成り立っているのです。
ということで、5G通信でのMIMOアンテナの活用例でした。
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Wi-Fi|Wi-Fi6
次はWi-Fiの最新規格であるWi-Fi6に焦点を当てていきます。
意外と知られてませんが、Wi-Fiにもモバイル通信でいう5Gのような通信の世代があります。
それが、Wi-Fi6です。
では、このWi-Fi6ではMIMOアンテナがどのように利用されているのでしょうか?
Wi-Fi6におけるのMIMO技術のポイントは以下の2つです。
- MU-MIMO
- 8×8MIMO
まずはMU-MIMOです。
Wi-Fi6からはMU-MIMOが搭載されるようになりました。
従来のWi-Fi5では下りのみがMU-MIMO通信でしたが、Wi-Fi6からは上りにも下りにも対応するようになりました。
これによって複数のデバイスが同時に通信をスムーズに行うことができるようになりました。
次は8×8MIMOです。
8つのアンテナの搭載するようになり、最大8つのデバイスと同時に接続できるようになりました。
Wi-Fi5では、最大でも4×4MIMO程度までしか利用されていませんでしたが、その2倍の8つの端末数を接続されるようになりました。
これによってより多くのデバイスが同時に通信できるようになりました。
まとめると、Wi-Fi6におけるMIMOアンテナのポイントは2つで、「MU-MIMO」「8×8MIMO」ということになります。
Wi-Fi6:MU-MIMO、8×8MIMO
まとめ|MIMOアンテナとは
では、記事をまとめていきます。
今回は「MIMOアンテナとは何か?」解説しました。
ポイントは以下の通りです。
- MIMOとは
- Multi-Input Multi-Outputの略。
- 複数の素子を搭載するアンテナ
- MIMOアンテナの仕組み
- マルチパス
- 復調システム
- MIMOの種類
- SU-MIMO:同時に1つの端末と接続
- MU-MIMO:同時に複数の端末と接続
- MIMOのメリット
- 大容量・高速通信
- 同時多接続
- ビームフォーミング
- MIMOのデメリット
- 消費電力
- 製造コスト
- MIMOの活用状況
- 5G通信:Massive-MIMO
- Wi-Fi6:MU-MIMO、8×8 MIMO
長くなりましたが以上です。
最後までご覧いただきありがとうございました。
何か疑問点などがございましたらご気軽にコメントください。
「参考になった」のひとことだけでも励みになります。
では、また次の記事でお会いしましょう!
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