【図解】変調とは?変調方式の種類と原理をわかりやすく解説します

~この記事で解決すること~

 
通信のときにどうやってデータを送るのかなあ?
電波にデータを乗せる仕組みを知りたい。
 
変調のことですね!
今回は通信の基本である変調について初心者にもわかりやすく解説します。
また、様々な種類の変調方式をまとめるので、最後までご覧ください。

 

※本記事は、電波に関する基礎知識があることを前提に更新しています。

電波に関する知識をこちらでおさらいしてからご覧ください。

 

変調とは?

変調と復調
図1:無線通信の変調と復調

変調とはそもそも何か?

 

変調とは、簡単に言うと、電波にデータを乗せることをいいます。

詳しく言うと、デジタルデータ(0,1信号)をアナログ信号(電波)に変換することです。

デバイスがデジタルデータで動作する一方で、電波に情報を乗せるにはアナログデータにである必要があるため変調が必要になります。

 

無線通信でデータのやり取りを行う際、電波を介してデータの送受信を行います。

電波を通じてデータのやり取りをするには、

0,1で処理されるデジタルデータをアナログデータ(なめらかな波)にする必要があります。

 

そのため、送信機に変調器を設けることでデジタル信号をアナログ信号に変換することができ、

電波を介して、データのやり取りを行うことができるようになります。

 

復調とは|合わせて覚えたい用語

 

復調とは、簡単に言うと、電波からデータを取り出す作業のことです。

厳密に言うと、受信したアナログ信号(電波)をデジタル信号(0,1信号)に変換することをいいます。

電波を受信したデバイスはデジタルデータによって処理されるためこの復調が必要となります。

今回の記事とは関係ありませんが、変調と密接な関係があるので抑えておきましょう。

 

変調:電波にデータを乗せる。
(デジタル→アナログ)
復調:電波からデータを取り出す。
(アナログ→デジタル)

 

各変調方式の原理|ASK, FSK, PSK, QAM

 

では、変調とは何かざっくりとわかったところで、主要な変調方式の原理を見て理解を深めていきましょう。

本記事では以下の4つを取り上げて解説しています。

  • ASK(振幅偏移変調)
  • FSK(周波数偏移変調)
  • PSK(位相偏移変調)
  • QAM(直交振幅変調)

 

ASK|振幅偏移変調

ASK(振幅偏移変調)とは
図2:ASK(振幅偏移変調)の仕組み

 

まずは、振幅偏移変調(以下ASK)から解説していきます

ちなみに、ASKはAmplitude Shift Keyingの略で、振幅偏移変調はその直訳になります。

 

振幅偏移変調って聞くと難しそうですがそんなことはありません。

ただ単に、ASKとは電波の振幅にデジタルデータを乗せることです。(※振幅=波の揺れ幅)

 

図2は、ASKの具体例です。

振幅が0と1の電波を組み合わせて変調しています。

デジタル信号が1の区間では振幅が1の電波を、0の区間では振幅が0の電波を送っています。

 

また、この図では、振幅が0と1で表現していますが、必ずしもそうである必要はありません。

異なる振幅の電波を用意できればデータを送ることができます。

 

まとめると、ASKとは振幅にデータを割り当てる変調方式です。

 

FSK|周波数偏移変調

図解_FSK(周波数偏移変調)の仕組み
図3:FSK(周波数偏移変調)の仕組み

 

次に紹介するのは、周波数偏移変調(以下FSK)です。

FSKはFrequency Shift Keyingの略で、周波数偏移変調はその直訳です。

 

ASKでは振幅に情報を乗せて変調をしました。

しかし、FSKでは周波数を変えることで情報のやり取りをします。

 

図3はFSKの具体例です。

デジタルデータの’1’に基準となる電波を、’0’には2倍の周波数を持つ電波を割り当てました。

こうすることで、受信したデバイスは周波数が低いなら1、高いなら0と認識することができるので、それを復調することでデータを受信することができます。

 

データを周波数に割り当てる。これがFSKです。

 

PSK|位相偏位偏移変調

PSK(位相偏移変調)とは_図解
図4:PSK(位相偏移変調)の仕組み

 

3つ目は位相偏波変調PSK)です。

PSKの意味は、Phase Shift Keyingの略で、位相偏波変調の直訳に当たります。

 

PSKでは、電波の位相に情報を割り当てます。

電波の位相とは、振幅が上がって下がって元に戻る1周期を360°としたときにどの状態にあるかを意味します。

つまり、図4では、電波の強弱が反転しているので、位相が180°ずれているということになります。

 

ではPSKの具体例(図4)を見ていきましょう。

今回は位相が180°異なる電波を用意して変調を行います。

’1’には基準波を、’0’には位相が反転している電波を割り当てるということです。

こうすることで、受信した電波を復調する際には、位相を見てデータを取り出すことができます。

 

まとめると、PSKとは名前の通り、異なる位相にデジタル信号を割り当てることで変調を行う方式です。

 

QAM|直交振幅変調

16QAM(直交振幅変調)
図5:QAM(直交振幅変調)の仕組み

 

最後に紹介するのが、直交振幅変調(QAM)です。

QAMとは、Quadrature Amplitude Modulationの略称で、これの直訳したものが直交振幅変調です。

ASKのように振幅を利用してデータを変調するのですが、これは他の3つとは性質が異なります。

 

QAMと他の3つとの違いは2つの電波を利用する点です。

位相が90°異なる2つの電波(sin波, cos波)の振幅の組み合わせでデジタルデータを表現します。

 

QAMの魅力は、1度に送れるデータ量が圧倒的に多いことです。

図5は、それぞれの振幅を4つの大きさに分けてQAM変調を行ったものです

左図のように2つの振幅の組み合わせを表現すると16種類のデータが表現できます。

つまり、4ビット(4桁のデジタル信号)の信号が一度に送ることができます。

ASK、FSK、PSKの4倍ですね。

 

これを一般的化して表現すると、電波の振幅をN分割して変調すると、Nビットのデータを送信することができると言えます。

つまり、ASKなどのN倍のデータ量が一度に送れるので、通信速度が速くなります。

前回の記事では、周波数が通信速度に大切だと表現しましたが、変調も通信速度大きく左右するといえます。

 

各変調方式の原理のまとめ
・ASK:振幅にデータを割り当てる
・FSK:周波数にデータを割り当てる
・PSK:位相にデータを割り当てる
・QAM:直交する2つの電波の振幅の組み合わせにデータを割り当てる

 

5G通信で活用される変調方式

5G_変調方式

 

では、最後に5G通信に実際に使用されている変調方式を紹介します。

結論から言うと、先ほど紹介したQAMが変調方式として使用されています。

しかし、QAMの細かさは先ほどは16個でしたが現在使用されているのが、

5Gではなんと256QAMが変調方式として使用されています。

 

256QAM

 

5G通信で使用されている変調方式は256QAMです。

一度に8ビットのデータを伝送することができる変調方式です。

 

従来4G通信でもQAMが変調方式として使用されていました。

しかし、分割数が少なく64QAMでした。

64=2^6なので、一度に送れるデータ量は6ビットでした。

一方で、5G通信では256QAMが使用されてるので、8ビット(2^8)伝送することができます。

つまり、約1.3倍のデータ量を送ることができます。

 

これに加えて、ミリ波やSub-6の活用といった周波数の高い電波を使用したりするなど様々な技術がかけ合わさって5Gの超高速通信が実現されるのです。(5Gの周波数帯は以下参照)

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5Gで使用される変調方式:256QAM
4Gで使用されていた64QAMの1.3倍のデータが送れる

 

まとめ|変調とは?

 

今回は通信の基本である変調についての解説しました。

まとめると以下の通りです。

  • 変調:電波にデータを乗せること
  • 紹介した4つの変調方式
    • ASK:振幅にデータを割り当て
    • FSK:周波数にデータを割り当て
    • PSK:位相にデータを割り当て
    • QAM:2つの電波の振幅の組み合わせに割り当て
  • 5G通信での変調方式:256QAM

電波にデータを乗せる変調

あまり注目されませんが、これがなくては無線通信は成り立ちません。

通信の仕組みを理解したいのならきちんと抑えておきましょう。

 

いかがだったでしょうか?

質問などございましたら、ご気軽にコメントしてください!

 

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