<本記事の内容>
周波数が変わると通信の何が変わるの?
電波の前提知識:周波数とは?波長とは?
電波の周波数と通信の関係を説明する前にまずはそもそも周波数とは何かを説明します。
それと同時に、電波の性質に大切な波長という概念に関しても説明していきます。
周波数とは

周波数とは、1秒間に含まれる電波の数を意味します。
ちなみに、1つの電波とは、電波が下がって上がってもとに戻る区間を指します。(参照:図1下図)
つまり、周波数が大きいほど電波の揺れは激しくなります。
そのため、周波数は振動数とも呼ばれたりしています。
また、余談ですが、振動1回にかかる時間のことを周期と言います。
周期は周波数とは反比例の関係になっています。
言い換えれば、電波のプラス・マイナスが入れ替える周期が短いほど、周波数は大きくなります。
波長とは

波長とは、1つの波当たりに進む距離のことです。
図1では下図の横軸が[時間]になっていましたが、図2では横軸が[位置]になっています。
ですので、一見図1の周期と同じに見えますが全くの別物です。
周期は振動1回当たりの時間、波長は距離です。
通信をざっくりと理解するために、波長に関して理解しておくべきことは、
「波長と周波数が反比例の関係にある」ということです。(参照:図2の式)
光の速さは変わることなく一定なので、周波数が高くなるほど波長は短くなります。
・波長 :1つの波当たりに進む距離
・周波数と波長は反比例の関係
電波の周波数が通信に与える影響
では、電波の周波数は通信にどのような影響を与えるのでしょうか?
今回は次の3項目に焦点を当てて解説していきます。
- 通信速度
- 電波の直進性
- 電波の伝搬距離
- 電波の透過力
通信速度
周波数が高くなるほど、通信速度が高くなります。
一度に送ることができるデータ量が大きくなるからです。
通信でデータを送る際、電波にデジタル信号(0と1の信号)のデータを乗せることで通信を行います。
先ほど紹介しましたが、周波数とは1秒間に含まれる電波の数です。
つまり、周波数が高くなると電波の数が増えるので、たくさんのデータを電波に詰め込むことができます。
ですので、電波に高い密度のデータを乗せることができるので、
周波数が高くなるほど通信速度が高くなります。
電波の直進性
周波数が高くなるほど、電波の直進性が高くなります。
波長が短くなると、障害物に対して回折することができなくなるからです。
回折とは、電波が障害物の裏に回り込む性質を言います。
この性質があるからこそ、建物の裏でも通信することができます。
しかし、高い周波数の電波になるほど、回り込むことができなくなってしまいます。
言い換えれば、電波がよりビームのように真っ直ぐ進むようになります。
したがって、周波数が高くなるほど、電波の直進性が高くなるといえます。
電波の伝搬距離
周波数が高くなるほど、電波の伝送距離が減少します。
空気抵抗をより多く受けるようになるからです。
先ほど解説した通り、周波数が高くなるほど電波の振動が大きくなります。
電波の振動が大きくなることで、空気中の水蒸気などで減衰を受けやすくなります。
したがって、周波数が高くなるほど空気中の減衰を受けやすくなるので、電波が遠くに届きにくくなると言えます。
電波の透過力
最後は透過性について触れていきます。
周波数が高くなるほど電波の透過力が弱まります。
透過力とは、電波が物体をすり抜ける力を意味します。
この電波の性質の1つである透過性によって、部屋の中にいても通信することができます。
そうでないと、電波をキャッチするために窓を開ける必要が出てきちゃいますね笑
しかし、周波数が高くなるほど透過力は落ちてしまいます。
そのため、5G通信で使用されることが期待されているミリ波(後ほど説明します)では建物の壁をすり抜けることができないので、現状の通信システムとの併用が想定されています。
・通信速度↑
・直進性↑
・伝送距離↓
・透過力↓
3G/4G/5G通信で使われている周波数帯

では、通信で使用されている周波数をまとめていきます。(参照:図3)
今回は、現状の4G通信と今後普及が進んでいく5G通信に分けて解説していきます。
- 3G/4G通信
- 5G通信
3G /4G通信での周波数帯
まずは現状の通信システム(3G/4G通信)について紹介していきます。
3Gおよび4G通信で使用されているシステムは以下の通りです。
- 2GHz帯
- 800MHz帯
2GHz帯
まずは2GHz帯です。
現状メインで使用されているのがこの2GHz周波数帯です。
2GHz帯は基本的に日本全国で確実にカバーされています。
ですので、4G通信でスマートフォンを使用している方はほとんどの場合で使用できると言えます。
といっても、山などの電波が届きにくい場所では2GHz帯が対応していない場合が多いです。
その場合に使用されるのが、次に紹介する800MHz帯です。
800MHz帯
800MHz帯は、3G/4G通信で補助的に使用されている周波数帯です。
2GHz帯でネットワーク環境を整備できない山岳部などで使用されています。
800GHzは、2GHzと比べると、透過力が強く、伝搬距離が長いという特長があります。
そのため、広いエリアをカバーすることに長けていると言えます。
通信速度はその分落ちますが、補助的に広いエリアをカバーすることで、
800GHzは安定した通信を届けるに貢献しています。
5G通信での周波数帯
次に、5G通信の周波数帯を解説しています。
5G通信で使用される周波数帯は以下の通りです。
- 24GHz帯(ミリ波)
- 4GHz帯(Sub-6)
- 920MHz帯(LPWA)
5G通信に移行すると、従来の通信システムを使わなくなると考えている方も多いのかと思いますが、それは勘違いです。
4G通信との併用によって通信環境を構築します。
ミリ波|24GHz帯
まずはミリ波(24GHz帯)を解説していきます。
5G通信で最も注目されている周波数帯です。
ミリ波の名前の由来は、波長の長さです。
図2で紹介した通り、周波数から波長を逆算することができます。
30GHzを波長に変換すると、1mmになります。
つまり、ミリ波とはミリメートルという小さい波長をもつ電波を使用する通信ということです。
24GHzという周波数は今までの2GHz帯などの従来の周波数帯と比較して、圧倒的に高いものです。
そのため、ミリ波を活用することで超高速な通信システムを実現することができます。
このミリ波こそが、5G通信の宣伝でよく使用される超高速・大容量通信の正体になります。
しかし、ミリ波という高い周波数は、伝搬距離が短く、透過力が弱いという欠点があります。
そのため、次に紹介する4GHz帯であるSub-6の通信システムの実現が先行しています。
Sub-6|4GHz帯
次に紹介するのが、4GHz帯であるSub-6です。
4Gから5G移行への架け橋となる役割をしています。
Sub-6とは、6GHz以下を意味します。
そのため、世界各国でばらつきはありますが、日本では4GHz前後の周波数をSub-6として使用することになっています。
5G通信として、ミリ波の使用が注目されていますが、
現状ではSub-6が5G通信としてメインで使われている周波数です。
ミリ波でのネットワーク環境を作るには非常に時間がかかるからです。
したがって、Sub-6が5G移行への入り口としてこれからもネットワーク環境が整備されていき、
将来的に活用されるミリ波通信への架け橋としての役割が期待されています。
LPWA|920MHz帯
最後に紹介するのが、主にIoTでの使用が期待されている920MHz帯のLPWAです。
このLPWAを5G通信としてカウントするかは諸説ありますが、今回は5G通信で使用される周波数帯としてとりあげます。
LPWAはLow Power Wide Areaの略称です。
省エネで広いエリアをカバーできるネットワークを意味します。
5Gのコンセプトとして注目を集めているIoTでの使用が期待されています。
IoTとは過去の記事でも紹介したように、日常のあらゆるものがネットワークにつながることを意味します。
最近だと、IoT家電(スマート家電)などが注目を集めています。
IoTを普及させるためには、多くのデバイスがネットワークに接続することが求められます。
今まではスマホやPCだけだったので、一般家庭だと1人当たり2,3個程度のデバイスしか接続しませんでしたが、
IoTが進むと家電などのあらゆるものが接続されるので、ネットワークに接続するデバイスの数は飛躍的に上昇します。
そのため、効率のいい通信環境が求められます。
そこで注目を集めているのがLPWAです。
低い周波数で広い範囲をカバーすることで、効率よくIoTのニーズに答えることができます。
特に革新的なことではありませんが、LPWAは縁の下の力持ちのような役割を果たすと言えます。
・3G/4G通信:2GHzと800MHz
・5G通信:24GHzと4GHz, 920MHz
今後の通信システム|周波数の観点から考察
では、今後の通信システムはどのように変化していくのでしょうか?
周波数帯に注目して考察していきます。
Sub-6、ミリ波の活用
今後の通信で最も注目すべき点は、Sub-6とミリ波の周波数帯の通信での活用です。
通信キャリアが競い合いながら、Sub-6とミリ波の活用を進めていくからです
5G通信のカバー率は通信キャリアが競い合う最重要の項目です。
そのため、Sub-6およびミリ波の普及が急速に進むと考えられます。
したがって、現在では5G通信(Sub-6、ミリ波)が使用できるエリアは少ないですが、今後急速に拡大していくと予想できます。
低周波数の電波を用いたLPWA
LPWAの活用にも注目です。
今後IoTが普及していく中で、省エネ通信も重要な課題になってきます。
先ほども紹介したように、IoTが普及するにつれて、ネットワークに接続するデバイスの数が急増します。
しかし、IoT家電を始めとしたデバイスはスマートフォンなどと比較して、あまり大きなデータ量を必要としません。
したがって、省エネなネットワークも高周波ネットワークと同様に大切になってきます。
まとめ|周波数と通信の関係
本記事をまとめると以下の通りです。
- 周波数:1秒間に含まれる電波の数
- 周波数高くなると変わること:
- 通信速度↑
- 電波の直進性↑
- 電波の伝送距離↓
- 電波の透過力↓
- 使用されている周波数:
- 2GHz, 800MHz帯(3G/4G通信)
- 24GHz, 4GHz, 920MHz帯(5G通信)
- 今後はミリ波、Sub-6、LPWAの動向に注目
以上です。
解消できなかった疑問点などがございましたら、ご気軽にコメントしてください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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